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2013年7月15日 (月)

Ⅳ号戦車のボギーに関する傾向と対策:その②

 書いてるうちにどんどんボリュームが増えちゃいました。その①の続きになります。

 ・円形プレートの考察追記とその対策

 その①を書いた後から改めてRepairing Panzersを見直していて、もう少し良い写真を見落としていたのに気が付きました。1巻には増加装甲付きシュルツェン無しのG中期型で当該部分が比較的クリアーに写った写真[1]があり、ここからはDML-FHのパーツがほぼ正確であることが見て取れ、また前後軸の両方ともほぼ同じディテール(その①のtype1)であることも確認できます。一方同2巻にはフランス戦時(植民地兵が写っているので間違いない)のD型の写真[2]があり、やや解像度が甘いですがトロイカの写真よりは大分マシ。肝心なディテールは1巻のG型のそれと基本的に同じに見えます。この2枚の写真から、まだ推論含みではありますが「A~E型までの円形プレートも基本的にF・G初期と変わらない」「同じボギーの前後軸は同じディテールとみなして間違いはない」よって「プラキットのパーツとしてはDML-FHが一番近い(トライやDML-AEの使用は避けた方が無難)」という暫定的な結論で良いかと思います。やー、前の記事書く前に気が付いとけって感じですね~。でもこれで製作は迷いなく進めることが出来ます。

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 というわけで実際にD型モデルに使用するパーツの加工。使用するのはDML-FHでも-HJでも大差はありません。先ずタミヤの0.1㎜プラペーパーから直径1.5㎜の円板を切り出します(この為に一本前にパンチコンパスの記事を挟んだのでした)。それをいったん適当なプラ材に貼り付けます(写真ではかつてイタレリのシャーマン下部車体だったモノ)。一晩置いて乾燥したら針の穴に0.5㎜のピンバイスで穴を開けます(右画像の一番左)。これで極小極薄ドーナツ板の出来上がり。

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 丁寧に剥がしてDMLのパーツに貼って、さらに極小の穴を錐状のもので二個、ちょんちょんとつけてやれば出来上がり。といっても1stトライのこの写真は汚いですなw。右(後)はそこそこですが左(前)は接着剤つけ過ぎ。お試しのつもりで元々開いてた穴も埋めてませんが、やる事は単純なのでいくつか練習して精度を上げるしかないですね。厳密にはドーナツとその外側はツラ一で、中心の小円だけ一段凹むのが正しいんですが、かと言ってDMLのパーツに直接彫り込むのは至難なので妥協的にこういう処理としてみました。どのみち足周りの最終組み付けは大まかな車体の工作を片づけた後なので、このパーツの出番はまだしばらく先。できればもう少しスマートな方法を考えたい所ではあります。因みに一旦別の板に貼ってドーナツにしてから貼り直すのは、それだけで一手間余計に食いますが、下のようにしたくない為です。

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 ・ボギー基部

 話をボギー基部の鋳造部分に進めます。といってもココでは大した話はありません。円形プレートをDML製で良しとした時点で、このパーツもそれに合わせる以外の選択肢は特にないからです。一応各社のパーツを並べてみます。

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 円形プレートの直径に合わせて円弧の大きさが変わるのは致し方ないとして、それ以外は左程大きな違いはないように見えます。トライの、縦方向のエッジがやや丸いのが目を引きますが、実車のパーツは比較的エッジが立ってます。他社は問題なし。またトライのパーツでは上の2本のボルトが省略されたJ型仕様になってますね。AFVのパーツはちょっと上下に間延び気味。やはりココでもベストはDML-FJになると思いますが、サイドのボルトの位置のズレ(両サイドの下2つずつ)を修正すれば同-AEも使えます。

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 実際にウチの5cm砲試験車に装着してみたところ。判りやすいようにこの写真では色の違う他キット(タミヤのキン太かパン太の鋼製転輪)から持ってきてますが、本来付いているものを慎重に剥いで移動させた方が何かと無難なのは言うまでもありません。

 なお実車の場合このパーツには鋳造ナンバーが鋳こまれており、最近の風潮としてそこまで再現するのも一興なのですが、D型の場合(というより現存しないいずれの型も)正確なナンバーが判りません。現存するG~J型なら読める物もありますが、それをそのままD型のパーツに仕込んでも意味ないと思いますので、今回はオミット。この件だけはいずれ機会を改めて考察してみたいと思います。

 ・アーム・板バネ部

 ココでもまず実車のパーツについて簡単に確認しておきます。

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 図は板バネ部分と前アームの一部を模式図にしたものです。現存車の写真から、先ず先端の小口の部分に見える板の枚数は概ね15枚と思われます(錆や汚れで写真からのカウントは結構難しいです)。一方前後のアームに挟まれた本体部分で枚数を数えると一応バネを構成する板の数は13ないし14枚。ないし、というのは、最上部の二枚が前アームの結合部分に殆ど隠れており、写真の角度次第で見えないからだと思います[3][4]
次に各社プラパーツの比較です。左は毎度おなじみボギー一体型。中は前後アーム固定型。イタレリは一軸可動ですがDML-FJは原則非可動。右はニ軸可動。中華系メーカーのものは板バネ先端部分のキャップが別パーツになっている点がミソです。

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 写真には一応入れましたがクレオスとイタレリはもう選考からは外しておきましょう。イタレリの板バネが思わせぶりな形状なのはなんでしょうかね?

 ・タミヤ
 アーム・板バネ一体型。板バネ先端のキャップに当たる部分も前アームと一体簡略化した形状です。この形状が実にあんこう号のCG画に似ていて、両者共、バネの先端小口が完全にカバーされて見えない仕様になっていますし、後述する結合ナットが無いのも一致[5]。一体成型すれば当然なんですけど(クレオスも同じ)。ちなみにバネの板枚数は10枚。少ないのは多分確信犯でしょう。実はこの部分もあんこう号と近似しています[6]。あんこう号のモデルはたぶんタミヤ⇒タミヤのキットで作るのが一番正解に近い、という判断をしたのはこの辺りがキッカケ。プラッツ版純正キットのアッセンブルの悪さもアリますが、やろうと思えば個人的にソコはあまり問題にならないので。プラッツ版はデカールだけ抜いてスケールキットとして消化し、スケールキットとして不満も多いタミヤをベースにした方が両方ポジティブに幸せってもんです。

 ・DML
 A~E型のパーツはニ軸可動で板バネの枚数は実車に忠実です。前後アームが可動の為に別パーツになっているのは、パーティングラインを完全に消してしまいたい場合には有意義だと思います。もちろん組んだら殆ど見えませんけど。前アーム軸下の円はただの押し出しピン跡だと思われます。組んで写真の状態にすると後ろのアームは板バネからは抜けなくなります。
 F~J型のパーツはスマキ対応の非可動型になりましたが、後ろアームに凹モールドが付いた以外、概ねA~E型のパーツと大差ありません。こちらも板枚数は正確。この部分に関してはDMLの2系統とも合格点かと思います。

 ・トライスター
 パッと見て板バネ部の上下が薄い点が他者と異なりますが、残念ながら実車はここまで細身ではないですねぇ。板の枚数は12枚。写真の状態でも後アームは板バネ部からすっぽ抜けます。パーツの仕上げの時にはこの方が都合が良いですが、ボギーに組みつける時には抜けないDMLの方が扱いやすいかもしれません。

 ・AFVクラブ
 こちらも及第点の形状ですが一番上の板バネがやや長いか?数えるとDMLより一枚多いように見えます(え?数える奴なんか居ない?ごもっとも)。後ろアームはトライと同じくこの状態からでも外せます。

 という訳であんこう号のタミヤを除けば、例によってDML以外を使う積極的な理由は無さそうです。ただしDMLのキットでもちょっと考証しておく部分があります。それは上のパーツに付く板バネ先端部分。先ずはコチラの実車写真をどうぞ。お馴染みアバディーンのD型改ですが、一番ボギーの左右で形状が異なるのが判ります。右一番は文字通りの“カバー”で、上下に並んだ丸穴が二つ開いているのが特徴。一方左一番は板バネの先端部分を束ねる、より単純な四角い“鉄環”です。板バネの先端は二本並んだボルトが貫通して束ねられており、上面にそのナットが見えます。さてこの二種の先端形状、穴開き型が前期、鉄環型が後期のパーツです。モデルアートのフォトブックD型改本では“43年中盤に切り替わった”との記述がありますが[7]、今回これまた実車写真をアレコレ調べてみた所、まずF型は複数の写真で穴開き型を付けていることが確認できました[8][9][10]。G型の場合、丸マズルブレーキで砲塔側面クラッペのあるF2型仕様はやはり穴開き型を付けた写真が一応あります[11]。一方、PANZER WRECKS 13にも掲載のコチラの写真では、車体の増加装甲と砲塔シュルツェンが付いたG後期型(砲塔シュルツェンはPW13の別カットより)で、明瞭に鉄環型が使われていることが判ります[12]。この写真だと鉄環部分の下には肉抜き穴が二つ開いているようにも見えますが、これは沈頭ネジ状のボルトヘッドと思われます。また冒頭に記したRepairing Panzers 1のG中期型(LSSAH所属で恐らくハリコフ戦時に撃破されたもの)も鉄環型パーツです。恐らく結論として『G型初期(F2型仕様)あたりまでが穴開きカバー型、G型中期あたりから鉄環型』と思われ、切り替え時期は上記フォトブックの記述よりも早い42年半ば頃であろうと推察されます。それを踏まえてキットのパーツを見てみましょう。

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 上段は穴開き前期型、下段は鉄環後期型です。トライスターとDMLのA~E型キットは両者をパーツ化。DMLのF~J型キットとAFVクラブのナスホルンは鉄環型のみがセットされています。トライスターがキット化している車種はB~D型とブルムベア・Ⅳ駆L70(A)ですから、前者は穴開き型使用で鉄環型が余剰、後者はその逆、例外的にブルムベア初期型は選択式になっています。DMLのA~E型キットではE型のみ選択式で残りはいずれも穴開き型を使用し、鉄環型が余剰となります。
 パーツの出来ですが、穴開き型の二種はどちらも大した違いはありません。強いて言うならDML-AEは上のナットがキチンとナットになっていない事と、下側にボルトヘッドが突出している点がちょっとおかしいですが、もちろん簡単に修正可能です。一方鉄環型に関しては、これも大きな差は無さそうですが、敢えて一つ選ぶならモールドがよりハッキリしている点でやはりDML-FJでしょうか。このパーツは中のモールドがちゃんと15枚になっています。結局ココでもDMLのパーツの妥当性を確認する作業になってしまいましたが、ただしちょっと待って下さい。実車写真から判断される穴開き型・鉄環型の切り替え時期とDML各キットのパーツ選択には若干齟齬がありますね。

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 改めてDMLだけ並べてみました。要はDMLの各戦車型キットのウチ“E・FおよびF2(G初期)型は穴開き型を使うのが正しい”ので、特に“F型各キットとF2(G)型(#6360)に鉄環型のパーツしか入っていないのは考証上のミス”と見做してよいと思います。もちろんE型の場合も選択の余地はありません。
 DMLのF~J型キットは、先行した短砲身型キットの体たらくを背景にスマートキットとしてまずF2(G)型から出たハズですが、この時取材対象となったのが恐らくアバディーンのG型なのではないでしょうか。アバディーンのG型は球形マズルブレーキを付けていますが、アレは後から交換したもので実際には砲塔側面クラッペが無い等、中期型の特徴を持っており、確認できる範囲では板バネのキャップも鉄環型になっています[13]。おそらくそれをそのままモデライズした上で、以降同じシャーシを持つ各キットにそのまま流用した結果でしょう。些細な事ではありますが、今回調べてはじめて気が付きました。この手の考証ミスの話は最近の模型誌の記事中にはまず載りませんからねぇ。なお私の場合はトラドラのニコイチで穴開き型のパーツが確実に余るので、それを転用して解決しようと思います。
 上の画像で右端のものは、鉄環型の下1/3を側面と一体のカバーで覆ったものです。アレコレ調べていて、複数の現存車で見られることに気が付きました。チェコ軍経由で現存する最後期J型の他、ソミュールのH型でも確認される[14]ので、H/J型の一定数がこのタイプを使っていた可能性が高いですが、一定の時期に切り替わったのか、或いは工場差分といった可能性もあるのか、その辺りはまだはっきり判りませんので今後の課題にしたいと思います。なおDMLのキットではJ最後期型(#6575)も含めてこのタイプはパーツ化されていません。

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 加工したDMLサス下部。先端部分のディテールを優先する必要上、穴開きでも鉄環でもメーカー問わずパーティングラインが側面全周につきます。当然上に付くナットにも被る訳ですが、整形が面倒なんで一旦切り飛ばして後から植え直しました。因みにココで使ったのはウェーブのナットセットで最小のものです。ウェーブのナットセットはコストパフォーマンスは良いですが、一目で判る程度に抜きテーパーが付いててちょっと目立つ所には使い辛いので、こういう日陰のパーツで消化するにはもってこいです。ちなみに画像向かって左はDML-AEのアームにDMLの穴開きカバーを付けたもの、右はDML-FJのアームにトライスターの穴開きカバーを付けたものです。

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 これで最後、板バネの後ろの部分。同じDML-AEの板バネですが、向かって左が無加工。黄色矢印の先に意味不明な突起状のモールドがあります。左は実車パーツに即してディテールアップした物。青矢印の先に、板バネの折り返し部分を留める3つの小リベットを植えました。もともとあったナゾ突起は多分このリベットのつもりだったんでしょう。ここはリベットの形になっていないことよりも(抜き方向から言って無理)、殆ど見えないこのリベットの情報をなんとかパーツに盛り込もうとしたことに敬意を表したいと思います(けど全部植え直すかはビミョーですが。なんせ見えなくなるんで)。

 ふ~、と言う訳でボギーの構成パーツに関する傾向と対策でした。相変わらず調べだすとアレコレ重箱の隅をつつく話が見つかりますねぇ。面白がってやってますがどんどん自分の首絞めてるな~、と思いつつ、次は起動輪か?、あんこうに寄り道するか?

引用文献

[1]Lukas Friedli『Repairing the Panzers: Vol.1: German Tank Maintenance in World War 2』 Panzerwrecks 2010 p187

[2]Lukas Friedli『Repairing the Panzers: Vol.2: German Tank Maintenance in World War 2』 Panzerwrecks 2011 p129

[3]ミリタリーモデリングBook『Ⅳ号戦車 A~F型』新紀元社 2011 p83 アバD改

[4]『AFVスーパーディテールフォトブックvol.5 Ⅳ号戦車F2/G型』モデルアート社 2007 p72

[5]例えば4話で冷泉殿を迎えに行くシーン。家の前に停車したカットでサス先端部分が確認できる。また3話冒頭のシーンでは円形プレートと前アーム軸部分が、やはり大映しで確認できるがこの部分もタミヤのパーツそっくりである。

[6]各話オープニング、1分19秒。目線の上を乗り越えていくカットでコマ送ると、目一杯で11枚と判る。

[7]『AFVスーパーディテールフォトブックvol.1 Ⅳ号戦車D長砲身改修型』モデルアート社 2006 p49

[8]Markus Zollner『Panzerkampfwagen IV im Kampfeinsatz』Tankograd Publishing 2006 p40 上段

[9]Waldemar Trojca, Karlheinz Munch『Pz.Kpfw.IV Ausf.A - F at War』Model Hobby 2006 p156

[10]グランドパワー No109 2003年6月号 p121

[11]Lukas Friedli『Repairing the Panzers: Vol.2: German Tank Maintenance in World War 2』 Panzerwrecks 2011 p92

[12]Lee Archer & William Auerbach『Panzerwrecks 13: Italy 2』Panzerwrecks 2012 p94,95

[13]『AFVスーパーディテールフォトブックvol.5 Ⅳ号戦車F2/G型』モデルアート社 2007 p72-76

[14]尾藤 満, 富岡 吉勝, 北村 裕司『アハトゥンク・パンツァー 第3集 Ⅳ号戦車編』大日本絵画 1993 p89

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