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2013年7月 6日 (土)

Ⅳ号戦車のボギーに関する傾向と対策:その①

 一応転輪話の続きになります。と言っても付いてる場所が場所だけに、転輪以上に写真で確認するのが困難で、スッキリした結論には至ってないんですけどね。
 Ⅳ号戦車のボギーは、大まかには鋳造製のベース、転輪が付く前後のスイングアーム、ベースにアームを固定する円形プレート、板バネから構成されます。タミヤは昔から一体成型、イタレリは実車と異なり一軸でシーソー式に可動でしたが、近年は実車に近づけた二軸可動を再現したものが増えました。しかし必然的に組立て難度が上がるため、DMLはF型以降のキットでは可動を諦め部品点数を減らしています。

 ・円形プレートのバリエーション

 前後の転輪の間から僅かにチラ見えするアーム固定用のプレートは、幾つかの細かいバリエーションが知られています。まずは確認の意味でプレートの基本形。

20130706a

 例によって縮尺は適当、ただしネットで拾った実車パーツの写真の上からトレースして描いたので、当たらずとも遠からずです。上縁に四つのボルト、その中間やや下寄りと円の一番下にそれより少し大きいキャッスルナットが2つ(恐らく円の垂直方向の軸からはわずかにずれています)。転輪アームの回転軸を固定する小円が前後に二つ。この円は恐らくほぼ同直径ではないかと思いますが、どうも後ろ側がわずかに欠けた形になるのでパッと見にはやや小ぶりに見えます。そこから前上方に向かってそれぞれ凸リブが伸びて、中程にグリスポイント。よってこのリブはグリスの導線であろうと推察されます。
 派生形も含め、生産の全期間を通じてこの基本形に大きな変化は在りませんが、問題は上の図で白抜きのままにした“アーム回転軸部”です。

20130706b_2

 派生型まで含めた現存車両の写真から、今の所3つ確認できた回転軸部のバリエーションです。一番外側でグレーにしてある部分はベースとなる円形プレート本体の一部でもある鋳造部分で、ココは恐らく各パターン共通だと思います。それぞれに一応型式を当てはめていますが、あくまで主観的推測です。他のパーツ同様、一個体8ボギー中で混用される例は珍しくないと思われます。また写真で確認できるのは原則として前アーム側だけで、後ろは転輪の陰に隠れちゃうので一つのボギーの前後ニ軸とも同じパーツなのか、そもそも前後で本当に共通規格なのかどうか、といった、根本的な問題が実は解決していないまま話を進めることをあらかじめお断りしておかなければなりません。
 いずれのパターンも、薄板の円盤(おそらく回転防止の為に二か所がカットされベースと噛み合う)が付いた上で、左のtype1は中心にもう一つ小円盤がつきます。アームが稼働する際にこの小円盤部分は一緒に回るのかもしれません。小円盤にはボルト穴のような小さい穴が二つ開いていて、さらに中心部分に一段円形の凹みがあります(図で中心のグレー部分)。絵に描くと同心円が4つ重なったようになるのはその為です。type2はtype1から中心の凹みを除いたもの、右のtype3は内側の円盤が一見無くなって、代わりに中心部に小さな円が見えます。ただし写真によっては円盤の縁がうっすら見えるような写真もあって、悩んだ末に上図ではグレーの細線で描きました。展示個体のちょっとしたペンキの厚塗りで見えなくなるレベルかもしれません。現存車で確認できる例としては、type1がアバディーンのD型改(左1番、2番ボギー)同じくアバディーンのG型(左1,2,4番)[1] 。type2と3はその他多くのG~J型とその派生車両で混在しています(上のリンクのアバD改だと三番目はtype2。flickrなのでいつまでリンクが持つか判りませんが。他にもっとアップで判りやすい写真だと、ムンスターのⅣ駆Oとかアメリカ民間所蔵のJ型とか)。
 一方、戦時中の記録写真でこの部分を確認するのは容易なことではありません、というか殆ど不可能に近いです。特にA~E型に関しては状態の良い現存車が無い以上、記録写真で確認したい所なのですが、その為には「泥や埃で汚れておらず」「できれば転輪が外れていて」「写真の解像度自体がプロ級に高い」写真を探す必要があります。ええ、無理ゲーです。
 と泣きごとを言ってても考証にならないのでまた資料本を一からひっくり返したところ、辛うじて『回転軸中心に凹みの影が見て取れる』レベルの写真が、C型で一枚ありました[2]。ただし細部が上のtype1そのものなのかは判りません。またF型の工場写真で左ボギー(の前軸)全部がtype1であると思われる写真も一枚ありました[3]。こちらは転輪の隙間からチラ見えですが、例によって質の高い工場での公式写真であることが幸いしています。以上のたった二枚の写真から取り敢えず現時点では、G型初期あたりまではtype1のパターンかな~、と類推するところです。補強されるにせよ覆るにせよ、もっと決定的な証拠写真が欲しい所です。

 さて、以上を踏まえて主要各社のプラパーツを確認してみます。

20130706c
 上の二つは一体式のタミヤとクレオス。それ以外はメーカーごとに縦列で左からイタレリ、DML、トライスター、AFVクラブと並んでいます。DMLは一番上がA型~E型までのキットに入っているパーツ、中と下はF型~J型に入っているパーツですが、キット毎にどちらか一方が指定されていて、一応指示通りに組むとすればDML-FHはH中期型(#6526)まで、DML-HJはH後期型(#6300:T-34のキャタピラが入ってるアレ)以降の型式で使う事になっています。トライスターのパーツは転輪セットのもので、一部のJ後期型に見られるグリス導線リブが凸から凹に変わったタイプ(一番下のTRI-3)が入っているのが目を引く点。AFVクラブの2つもナスホルン足回りセットのパーツです。なお横列の並びは私の主観で同じタイプをモデル化したものかな~というのを並べてます。
 まずパッと見で気が付くのは直径の違い。トライスターがやや大きく直径6.75㎜、同じくイタレリが6.7㎜、DMLの-FH,-HJが6.2㎜、タミヤが6.15㎜、クレオス・DML-AEが6㎜、AFVクが最少で5.9㎜です。実車の実測値を知らないことにはどれが正しいか俄かには判定できませんが、少なくとも実測して設計された(と言われる)DML-FH,-HJとタミヤがほぼ同じ値なのは無視できませんねぇ。
 その他、メーカー毎に特徴をみてみると、

 ・タミヤ
 いつものようにディテール情報が間引いてありますが、まぁ確信犯でしょう。以前、「技術力の問題かな?」なんて失礼な事を書いちゃったこともありましたが(^-^;、金型の製造コストやメンテナンスコストを踏まえているのでしょうかね。回転軸の蓋が二段の円だけというシンプルさ、また下のキャッスルナットは省略されています。スケモのパーツとしてはこの時点でハネたい所ですが、実はガルパンのあんこう号としてはこのパーツが一致します。最終話のドリフトシーンほか、BDコマ送りで確認しました( ^ω^ )。話の順序は逆ですね、ガルパンのCGはタミヤのパーツを元にしてる、という半ば確信的な推論を、私はこのパーツを眺めていて立てました。この点は後でアームの時にも触れます。

 ・クレオス
 タミヤからさらにグリスポイントも省略。元ハイテックの面影も今何処、申し訳ないが個人的には用済みです(でも橙箱のⅣ駆は相変わらずこのパーツみたいでした)。

 ・イタレリ
 モールドとして盛り込まれた情報量だけならクレオスより上、というのが設計年代を考えると流石。とは言え、軸部分のモールドはやや省略されてます。

 ・DML
 -AEが小さいのはやっぱり設計ミスでしょうかねぇ。非常に気になるのは軸回転部の前後でモールドを変えてある点。所謂アドバイザーから何らかの資料提供でも在って、根拠に基いたモールドなのかが非常に知りたい所です。ただし、それにしてもやはりモールドが省略気味で、その下のパーツと比べた時に嘘臭さが払しょくできません。その-FHと-HJは流石高田組の仕事で、上述type1とtype3をほぼ正確にパーツ化しているように思います。足りない点があるとすれば、-FHで3番目の円盤につく2つの小穴が無い所と、どちらも中心にある一番小さい円(凹み)がタダの点になっている所。これらはいずれも金型製造上の限界に起因するのかもしれません。

 ・トライスター
 直径が大きいのが設計ミスならちょっと残念です(イタを参考にしたとか???)。また軸のモールドもDMLの下2つと比較してしまうと、どうしても大雑把な印象。上側のキャッスルナット部のモールドなんて頑張ってる方なんですが。前軸と後軸で直径が変えてあるのも、根拠があるのか見た目の錯覚をそのままモールドしちゃったのかは謎。上にも書きましたが-3の凹導線タイプはある意味貴重。

 ・AFVクラブ
 出た当初に小さいと批判されたDML-AEよりまだ小さいというのが解せません。良く見るとボルトやグリス導線の凸リブなんかも全体に小振りで、これはちょっと・・・なレベル。にもかかわらず(いや、だからこそ、か)回転軸部のモールドは繊細で、-2なんかはDML-HJを部分的に凌ぐくらいだと思います。ああ勿体ない。

 結局のところ、転輪と略同様の理由で、個人的にモデルに使うのはDML-FHと-HJに絞ろうと思います。ただしあんこう号はタミヤで何ら問題ありません。で、その対処法やらボギーの他の部分やらも一気に書くつもりでしたが、これまた例によって長くなっちゃったので、一旦切って続きは(間にTropDの紹介記事を挟んで)次々回にします。

引用文献

[1]『AFVスーパーディテールフォトブックvol.5 Ⅳ号戦車F2/G型』モデルアート社 2007 p71-72

[2] Waldemar Trojca, Karlheinz Munch『Pz.Kpfw.IV Ausf.A - F at War』Model Hobby 2006 p81

[3]『ピクトリアル ドイツ軍戦車 増補改訂版』サンデーアート社 1991 p53

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