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2013年7月 9日 (火)

キット雑感:サイバーホビー #6779『Pz.Kpfw.IV Ausf.D DAK Tropical Version』

 金も払っていない商品にはとやかくケチつけない(ダメだと思うなら黙ってスルー)、しかし身銭を切って買ったものにはあくまで事実に基づいて『言いたいことはハッキリ書かせてもらう』ということを一応のポリシーとしています。今回紹介する新製品は、ハッキリ言って『お進めはし難い』久しぶりに大いにズッコケさせてもらった製品でした。このキット、取り敢えず箱の中身をそのまま組み上げても、少なくとも標準的なD型にはなりません┐(´д`)┌。

 20130709a

 ボックスアートはボルスタッド氏の新作。ナンバー三桁の第5軽師団(21師団)第5戦車連隊の車両をモチーフにしています。ボルスタッド氏の絵は好きですね。高荷画伯とはベクトルが違いますが、甲乙付け難い魅力がありますね。

       え~、基本的にこのキットで褒められる所はココだけです。

 いつもならココからランナーの写真を順に並べていく所ですが、今回は必要ないでしょう。箱の中には、既発のDML製Ⅳ号キット群の中から、D・E・F各キットのランナーがとり混ぜて入ってるだけですから。なので限りなく新製品とも言い難いのですが、まぁ流石にその点だけでどうこうは言いますまい。問題はそのアッセンブルの仕方です。コンセプトとして無駄にパーツ数が多かった旧版D型をスマートキット化する(ついでに新製品らしさの演出としての熱帯仕様化)、という商品なので、分割の多かった足周りを中心に小パーツ化が図られている訳ですが、その図り方が実に大胆。まず『転輪とボギーはF型のものを使います』。旧版は可動を狙ったりゴムタイヤを別体にしたりで無駄にパーツ数が多かった。そこでスマートキットとして登場したF型のパーツを使い回せば、こっちもスマートになるやん!ナイスアイデア・・・アホか。ちなみにハブキャップはそのままF型のものを用いても良いし、同梱されている旧D型のランナーから初期型キャップを使っても良し(もちろんF型の転輪にそのまま付ける)・・・まぁ確かにドッチもD型で見られるけどね。そういう問題じゃねぇ。因みに旧D型用の“ホイール”は不要部品としてまるまる入ってますが、ゴムタイヤは入ってる訳ありません。
 そしてもっと酷いのは起動輪。旧D型の起動輪は歯の付いた外縁リングやらボルトやらを無駄に別パーツ化してあって、まぁアレはアレで考えた奴はアホだと思いますが、それをそのまま入れてたのではスマートキットは名乗れない。よし、普通に二分割されている『E型用の起動輪入れとこう!』・・・あのなぁ。まぁ探せば前線でそういう修理改修を受けた個体はあったかもしれんけどね・・・・しかも、よくよく箱を確認すると、裏面のCAD画では普通にD型用起動輪らしき絵が印刷されてる・・・ってまさかの『製品とは仕様が異なる場合がありますのでご了承下さい』攻撃キターw( ̄Д ̄;;
おまけに転輪の枠にはわざわざF型用起動輪が不要部品で付いてくる滑稽さ。
 

 そう、このキットは限りなく『プラッツ版のあんこうD型に近いアッセンブル』なんですわ。いや、あんこうDのキットにはD型用の起動輪も一応入ってた(けど40㎝キャタに合わないよ)だけ、まだ向こうの方がマシかも。思うに、あんこうD型のあのアッセンブルが日本市場でそこそこ良い数字を出したもんだから「これは案外使える手アルネ。細かい事に煩いw日本のモデラーがこれでも満足して買ってるアルなら、殆ど追加コストを払わずに、今度は世界市場でももう一儲けできるアルヨ」みたいな冗談にしかならないやり取りがDML社内で交わされたのではないか、と結構マジで疑ってしまう内容です。でもなぁ、あんこうDが売れたのはそういう意味じゃないから!

 ちなみに本キットの為に新たに作り起こされたパーツは2つだけ。一つは38㎝用のDSキャタ。

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 私個人的にはハナから使うつもりはないのでどうでもイイのですが、こんなにバリだらけの軟質ベルトキャタ、どうやって下処理やるんでしょうかね?コレ、作り起こしの新パーツのハズなんですが。普段使ってる人はどうしてんだろう・・・。

 もう一つの多分作り起こしはEPパーツ。

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 比較の為にあんこうDに入っているものと並べてみました。旧D(E)でウリの一つだった一体型誘導輪をオミットした関係で、ソレに貼るEPパーツが削られて小さくなっています。話がそれますが、この“旧版の一体型誘導輪につくEPパーツ”の意味が未だに良く判ってません。まぁ近いうちに嫌でも検証してみますが。ともかくそれが無くなって、代わりに初期ドイツ戦車に付き物の車体番号プレートが入っています。

 ってな訳で、少なくとも箱の中身をそのまま組んだだけでは標準的なD型にはならない、と断言せざるを得ません。繰り返しになりますが、D型車体にE型の起動輪を履かせたりF型のサスと交換したりといったことは実車でも可能なので、“不正確なキットである”と言い切ることはできないかもしれません。が、少なくとも“不誠実なキットである”ということは間違いないと断言します。なにしろ“チュニジアに上陸したときのⅣ号D型の仕様”をモデライズした製品な訳ですからね。しかもここまで、キットのベース部分に関する考証上の問題は一切棚上げにした上で、の話です。
 因みに私個人にとって、このキットはトライスターD型と掛け合わせて考証上納得のいくE型をつくるのには、まぁ使えるかと思っています。転輪話の時に触れましたが、E型の転輪もD型のパーツから加工したほうがより納得がいくし、丁度E型の起動輪も入ってますし。E型をキチンと作り込むなら「トラD×ドラE」よりも「トラD×ドラD」です。砲塔の形状が違う?どうせドラEの砲塔はおかしいので、やる事は一緒です。他にも足りないパーツがある?確かに目立つキャッチーなパーツとしてはキューポラとドライバーバイザーはなんとかしないといけませんね。E型用のドライバーバイザーはコレという満足のいくものが少ないのですが、タスカのルクスあたりから部品請求するなりコピーするなりすれば良いでしょう。キューポラはできればDMLのF型なりⅢ号なりから持ってきたい所ですが、無ければタミヤのⅢ号あたりから部品請求しても良いでしょう。ちょっと考えたのはDMLのボイテT-34からコンバートしてくるのもアリかな(T-34はそのまま組むか、あるいはキューポラ交換でボイテるか)、とも。ま、そういった事を本気で考える人には“部品取りキットとして”買っても無駄にはならないかもしれませんが、普通にⅣ号D型が作りたいだけの方は、延び延びになっている旧版キットの再販を待つ方をお勧めしておきます。

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コメント

あららら。

ドラゴンはI号戦車シリーズなどに見るように、同系列の戦車/車台のキットが、発売時期によって本来共通である部分がバラバラというケースがよくありますが、これはまた難儀なことになってますね。

投稿: かば◎ | 2013年7月10日 (水) 23時27分

Ⅰ号の場合は出す度に改定が加わって結果的にそうなった、という好意的な見方もできない訳ではありませんが、今回はそういうのとは根本的に違いますからね~。ゴム縁一体型の狭幅転輪くらいは新たに型起こしてくるのかと思いきや・・・
プラッツがドラゴンに要らん悪知恵を付けてしまった、としか思えません┐(´д`)┌

投稿: hide | 2013年7月11日 (木) 17時37分

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