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2012年7月17日 (火)

考証:3tブリッツ・ホイールの変遷 もしくは「サイババ・マウルティアの謎」

という訳で一応考証カテゴリーで独立させましたが、この記事は実質前記事の続きなので、先にそちらを読んで下さいな。

 本題に入る前に前記事の訂正を。記事末に書いた3tブリッツの製造開始時期は、タンコグラッドの中綴じブリッツ本によれば36年でした。軍に採用されたのは翌37年からで、最初は兵員輸送用のカーゴからですが、ゆくゆくはその辺り荷台の仕様変遷とシャーシの細部仕様の相関からまとめて行く必要があるやに思われます。

 では本題。例によって知ってる人には百も承知の内容ではありますが、まずは3tブリッツのホイールについて基本事項を整理しておきます。3tブリッツのホイールは製造時期に従って大きく3種類に変化しました。

20120716k                          Attribution:Bundesarchiv Bild 101I-268-0176-34

 先ずは最初に使用していた6つ孔ホイール。グレイ塗装のブリッツなら普通このイメージ。お馴染みイタレリもこのホイールに溶けるタイヤでした。便宜上、前期型と呼びます。

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 上段は白箱ブリッツ、下段はタミヤ。左は前輪で右は後輪ですが、特にどちらも遜色ない出来だと思います。強いて言うならナットの表現がDMLの方が一枚上か。タミヤは相変わらずこういう所で解像度を落としにかかりますが、組立てに直接関係無い所でこういう事やるのはタダの手抜きと言うのは言い過ぎか?

現存車両のクローズアップ

 コレと見比べても、基本形は両社共悪くないと思います。画像は後輪ですが、知っての通り後輪ダブルの場合の外側は前輪の裏表をひっくり返したモノですね。この事にちょっと留意しておいてください。

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                            Attribution: Bundesarchiv RH8II Bild-B0766-42 BSM

 次にこのハウスバンを載せた車両が履いている8つ孔タイプが登場します。このタイプを中期型と呼ぶ事にします。写真がイマイチなのは御勘弁。版権フリーで使える画像は限られているので、やむを得ずです。ちなみにこの個体はA型ですが、ホイールはAもSも共用のハズです。3tブリッツのAとSはルーバーの切ってあるボンネットサイドパネルの形が違うので(より根本的にはボンネットとキャビンの高さが違う事に起因しますが)この角度からでも簡単に見分けがつきます。

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 こちらは白箱ブリッツで2作目(#6716)以降にセットされたパーツ。と言っても実は上に載せた前期型のパーツ共々、マウルティアのキットに入ってるパーツです。このパーツもパッと見には左程悪くはない・・・ように見えますが、

現存車の履いているパーツ

と比べると、実は孔の形状に少々齟齬があります。キットパーツの孔は、二等辺三角形の両下端の角を丸くした形であるのに対し、実際の中期型ホイールの孔はさらに底辺にアールが付いています。個人的なイメージだと擬宝珠のシルエットを連想します。まぁ、あそこまで先っちょはツンツンしてませんけど。
 齟齬の原因は、実車では別パーツで構成されているホイール本体のプレスお椀部分と外周のリムが、キットパーツでは一体成型のタイ焼き型で成形してある事につきます。仮に別パーツ化しても、タイ焼き型で成形する限りは同じかもしれませんが。ただ、公平に言うと、先ず前輪に限って言えば孔の下端のアールはお椀とリムとの接合部に回り込んで隠れ気味になるので、パッと見には実車のホイールもキットのそれと同じように見えます。一方後輪は、後述する後期型の所で詳しく触れますがちょっと誤魔化しが効き辛い。またそれとは別の話として、中期型ホイールを履いた写真の中には後輪を見ても孔の下端のアールが判り辛い、というか見えない、もしかしたらよりキットの孔の形状に近いように見える写真も有ります。撮影角度の問題でそう見えるだけかもしれませんし、実際に中期型のホイールに微妙な形状差分が混じっている可能性もあり得るので、私の中では継続審議中です。

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                                                                       Attribution: wikimedia Public domain

 三つ目に登場する後期型ホイールの例です。中期型と混同されていることが多いような気がするのですが、擬宝珠のツンツンが無くなってタダの丸い孔に変わっているところを識別点としておきます。この画像は現存するA型ですが、この角度から見るとアーチ型?かまぼこ型?兎に角、半円形の孔が開いてるようにしか見えないでしょう?

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 キットパーツです。上段は今回のマウルティアで新規に起こされたJランナーのパーツ、下段はイタレリ用のリプレイスパーツとしてショーモデリングから出ていたパーツです。後者はアイアンサイドのブリッツ・バスにも同梱されていました(このこと自体、中期型と後期型を混同している例のような気がしないでもないのですが、それはまた別の機会に置いておきます)。どちらも孔の形は、完全にやや平たい半円形ですね。で、実車のパーツはどうかと言うと、ちょと良い写真が出てこなかったのですが、

現存車の後期型ホイール(が判る写真)

 (ノ∀`) アチャー 楕円です。完全に。
 中期型同様に後期型のホイールも前輪はまだ視覚的な誤魔化しが効くのです。しかしお椀部分が裏側から丸見えになる後輪は・・・。中期型はまだ目を細めて心の中で言い聞かせたらなんとなくキットも実車も変わらんような気がしないでもなくもない(^-^;ですが、後期型の後輪は楕円である筈の孔が半分にぶった切られているので目をつぶって見ないようにしない限りアウトですな。ショーのタイヤセットが出た時には、イタレリのあのゴムタイヤの事もあるし、インジェクションパーツでもあるし、あの当時はまだ今程にはアフターパーツが溢れ返って把握もできない程ではなかったしで飛びついたものですが、このホイールの孔形状の問題に気が付いてからは一気に使えないパーツになってしまいました。なんだかもう、確信を持って半円形にしてあるような気がするもんなぁ(主観ですが)。
 それだけに今回のDMLの仕事には期待も大きかったのですが、やっぱり駄目か。駄目なんか。インジェクションのタイ焼き型では、曲面に回り込むように開いた孔は再現できないんか。調べてみるとレジン製品の一部にはゴム型の特性を生かしてちゃんと楕円を再現したものも在るに在るのですが、そういったものは今度は肉が厚すぎたり、お椀の曲率が似てなかったり、そもそも右から左へ欲しい時に手に入らないよ、ってなもんで・・・いやもうね、期待が大きいと失望も大きいのです。この問題に比べたらタミヤのシャーマンの転輪の裏にモールドが無い件なんて可愛いもんだ、とか変な奴当たりをしてしまいます。
 もういっそ真鍮板プレス打ち抜きのホイールどっか出してくれないかなぁ。いや、そういうのが自分でホホィっと造れればカッチョ良いのですけどねぇ。

 さて、3tブリッツのホイールに関する講釈は取り敢えずココまでですが、前記事で振った“今回のマウルティアに関する不可思議”はココからですよ~。

 上にも書いたように、後期型ホイールのパーツは今回のマウルティアの新規部品です。箱を開けて真っ先にそこを確認して、文字通りorz状態になる事しばし、まぁ気を取り直して記事の為に他のパーツも検分しましょうか、となった段階で妙な事に気が付いた。

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               この新規パーツ、不要部品扱い?

 慌ててインストの中身を確認してみると、成程使用するのは中期型のパーツが指定されている・・・ははぁ、こりゃ例によって例のごとく、いつものDMLトラップだね~。ま~たインストの描きミスかー、と最初は思ったのですが・・・ん?

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 もし単なるインスト上の表記ミスだとすると、つまり後期型のパーツを使うとすると、中期型のパーツが入ってるGランナーって、ほぼ不要部品だけ・・・・??? 一応G10番のブレーキディスク(?)のパーツだけは必要だけど・・・

 いくらなんでもその為だけに枠一枚同梱するか?いややるかな。でもこうは考えられないかな。DMLは何らかの事情で新規に起こしたパーツを捨てて既発のパーツに差し替えたんだよ。何故に?

「新規に起こしたは良いがその形状の不正確さに社内で異論が出て結局ボツに、しかし発売予告までもう時間が無かったため、急遽白箱ブリッツのランナーを足して差し替えることにしたのさ!」

「な、なんだってー!!(注:妄想です)

実際のマウルティアには中期型、後期型のいずれのホイールも使用可ですが、例えばNuts & Bolts 28に収録されている写真をざっと見ると写っているのは殆ど後期型。勿論本一冊持ってきてそこに収録されている写真だけで統計的な事は云々言えませんが、でもどっちがよりらしいかと言えばやっぱり後期型の方がらしいし、DMLもそう考えたからこそ新規にパーツを起こしたに違いないハズ・・・

20120716s
ほら、ボルたんの箱絵も後期型になってるでしょ?

             もう、訳が判らないよ。

 本当の答えは今後必ず出るであろうPanzerwerfer辺りを待てば判るのでしょうか?取りあえず上のような妄想期待を繋いでみたりするのですが。しかもそれがA型発売の為の布石とかなら言う事無いのになぁ。
 なおマウルティアのインストには別に“ちゃんと”間違いもあって┐(´-`)┌、最初の方のセクションで使うフレームパーツの番号指示が白箱ブリッツ用のフレームになっています(御丁寧にイラストも含めて)。後のセクションでは新規のマウルティア用フレームの番号がしれっと指定されているのですが、気が付かずに最初にエンジンを載せちゃうと、後から足周りが付かなくなって結構致命的なトラップ発動しかねないので、組む方はお気をつけあれ。とは言え全体としては良くできたキットだと思われますし(組まずに言うのもなんですが)、予想通り大量の不要パーツで、やろうと思えば普通のブリッツにも組めなくはない(タイヤの本数が足りないのは自力で何とかする必要がありますが)ので、ホイール形状の問題さえクリアできれば後期型の3tブリッツを使う例のネタをはじめ、ブリッツファミリーの改造用ベースキットとしても緑箱で出た意味は大きいキットだと思います。まぁなんのかんのと言いながら、あと二つ位は買っちゃいそうですな。

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コメント

やはり金型の開閉方向に対して角度が付いてしまっている面(しかも曲面)の穴の形状は、どうしてもネックになりますね。

かといって、その部分を修正するとか、ましてや自作するとかいうと、これまた「どう手をつけていいやら」になってしまうのですが。

投稿: かば◎ | 2012年7月19日 (木) 04時29分

ドラの場合、逆テーパーで普通なら再現不可能な誘導輪のリム形状を分割して再現したりと、タミヤなら絶対見て見ぬ振りする所でやる気出したりするので、結構本気で期待してはいるんですけどね~。

投稿: hide | 2012年7月19日 (木) 22時14分

後期型ホイール。野戦救急車タイプ(サイバーホビー#CH6766)で、屋根に載るスペアホイールに楕円型の穴に修正した新パーツ(N33)をしれっと追加しているような。。ホビーサーチ(http://www.1999.co.jp/10222855)に掲載の写真と組説図に、この問題をクリアするような姿のパーツが見えます。実検した訳ではないので確証はないのですが。

投稿: HN | 2015年6月 7日 (日) 06時59分

HNさん、休止気味の当ブログにコメント有難うございます。おっしゃる通り、#6766のスペアホイルは手元にあるインジェクションパーツの中ではかなり頑張っていると思います(実はキットはとっくに手元にあったのですがご指摘を受けるまでロクにチェックしていませんでした、反省(;´Д`A ```)。正面から見る分には裏面からでもちゃんと楕円に見えます。惜しいのはプラの厚みの問題で斜めから見るとそれがモロに出てしまう所と・・・あとは取り寄せの効かないキット一箱に一つしか入ってないところですねw。と言いながら当該のキットは救急車仕様のパーツを目当てに複数押さえてはいるので、パーツを寄せ集めれば後期型のブリッツを一台、ドラ/サイバーのパーツだけで組み上げることは可能かもしれませんというかいい加減手をつけて記事にしたい所存です。

投稿: hide | 2015年6月 7日 (日) 18時46分

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